2023年7月14日に開催されたMyDataJapan Conference 2023での、医療データ利活用にかんするセッション:Track B-4「患者中心の医療データ活用」と、モデレータを務められた松村泰志先生の講演:Track B-3「医療データ利活用ニーズの整理とそれぞれに必要とするシステム」に関するセッションのレポートです。なお、本レポートはMyDataJapan 2023大会事務局が作成したものです。
基調講演・モデレータ | ||
松村 泰志 | 国立病院機構大阪医療センター院長 大阪大学名誉教授 | |
パネリスト(発言順) | ||
桜井 なおみ | 一般社団法人CSRプロジェクト代表理事 | |
宮内 恒 | 三井住友銀行デジタル戦略部 部長 兼 株式会社プラスメディ 取締役 | |
加藤 和人 | 大阪大学大学院医学系研究科 教授 |
松村 泰志 氏(基調講演)
講演資料「医療データ利活用ニーズの整理とそれぞれに必要とするシステム」
松村泰志氏は、医療のデータ利活用に携わった医師の立場から、医療のデータ活用には8つのニーズがあり、そのデータ内容に応じて3つのシステム:①EHR・PHR、②(医療やケアに係る人の)コミュニケーションツール、③(全国民の特定の医療データを集積した)医療データベースが必要であると述べた。
次に松村氏は、医療データ利活用のニーズとして、目的に応じて下記の8項目に整理した。
- 患者に関わっている医療施設が相互に患者の医療譲歩を閲覧
- 患者の医療ケアに関わる人の相互コミュニケーション
- 発症当初からの記録を保管し医師に見せる
- 個人が自分の医療データをサービスに提供可能
- 診断書情報の個人管理
- 疾病の頻度等を横断的に集計できる仕組み
- 疾患の経過を長期に追跡して評価する仕組み
- 国民の医療データが医療政策のために解析できる環境
これらをデータの内容によって分類すると以下の3種類に分かれるとし、これらのデータを扱うために3つのシステムが必要であると述べた。
- 原則同意を得て特定の疾患患者の特定の医療データ(①③④⑤⑦) -> EHR・PHR
- 収集や分析を目的としない患者に関する情報 (②)-> コミュニケーションツール
- 全国民の特定の医療データ(⑥⑧)-> 医療データベース
ここでEHR(Electronic Health Record)は患者を軸として多施設に分散する医療情報を集約することで施設間連携を支えるシステムであるが、従来の日本型のEHR(お互いの電子カルテを相互に閲覧、分散型)と海外のEHR(各施設が管理する医療記録から必要な記録を抽出して「プラットフォーム」で管理する)の違いを説明し、それに患者向けのインタフェースを備える「EHR・PHR」の必要性を述べた。
松村氏がイメージする「EHR・PHR」は、患者を軸として、その患者の医療情報を集約したシステムで、以下のような4種類のデータを扱うものとしている。
- 患者に共通する項目データ(アレルギー・禁忌、処方、検体検査結果、感染、病名)
- 診療課題(治療対象となる疾患名)毎に定められた項目データ(疾患の重症度、タイプ、併発疾患、治療内容、治療結果/合併症、長期の経過(自覚症状/副作用/イベントの発生)
- 医師が閲覧する情報(画像レポート、キー画像、病理レポート、退院時サマリ等)
- 健診データ(マイナポータルから取得できる情報、各健診機関から送付されるデータ)
- 患者が自分のスマートフォンで閲覧できるが一部のデータは医師のみ
- 3以外は構造化データとして収集
- データの管理者はEHR・PHRプラットフォーム事業者
氏は、さらに日本で推進されている医療DX(電子カルテ情報交換サービス)に言及し、良い点を評価する一方、懸念点もあるとした。医療情報交換システムはEHR・PHRの前段階のシステムであり、またマイナポータルはPHR的機能を持つが、生涯保管されないことから本来のPHRではなく、これらは本来のEHR・PHRにデータを送信する役割となると説明された。
最後に松村氏が考える未来の医療情報システムの構想を紹介し、まとめを行って講演を終えた。
桜井 なおみ 氏
講演資料「Patient Journeyに寄り添う DX」
桜井なおみ氏は、自身が若年性がんの体験者として、患者あるいは支える側の目線でDXについて講演を行った。患者の様々なデータを治療後も含む長期的な視点で捉えることや、Patient Journeyという患者の生涯に寄り添った視点でデジタル化を考えることの重要性を述べた。
桜井氏ははじめにASCOというアメリカの癌の学会で、治療そのものではなく副作用の管理へのデジタル活用の効果が発表され、デジタル活用が一機に広まったと述べた。患者レポート(PROs: Patient-Reported Outcomes)のデジタル活用(ePROs)で救急外来が減り、QOL(Wellbeing)も向上し、全生存期間(Overall Survival:OS)が6ヶ月伸びた。(Digital Sympton Monitoring using Electoronic Patient-Reported Outcomes)
氏はさらに、日本の「がん対策推進基本計画(令和5年3月28日)」でも、PHRの推進など「デジタル化の推進」が記述されたと述べた。自身が若年性ガンにかかった経験から「既医療者として、発症している人たちだけでなく、(治療後の)私たちのデータも医療の分野に応用できないのかなと思っていると述べた。
桜井氏は次に、欧州のデジタルの考え方(欧州ヘスルデータ空間)について述べた。日本のような6情報に限定とかいう話ではなくて、全部の情報をどうやってデータベースに入れていくかということが出てきていること、一方で日本ではなんでこういうことができないかということや、データを活用していったときに、中間評価をして画期的な者が出てきたときは研究費をプラスする仕組みができないかと述べた。
次に、桜井氏はPatient journeyという考え方を示し、「患者としての歩み」に寄って欲しいと述べた。Patient journey mapで検索すると糖尿病とかいろいろな人達のものがでてくる。生まれてからいろんな病気や予防注射を受けてきたという情報が今後の健康管理に対して重要になってくると述べ、人として生まれてから現在までデジタルの中で応用できるということを説明された。
また、氏は自身のがんになる前(未病)から、急性期、延長期、慢性期、老いまで、どんなタイミングでデジタルの技術があったらよかったかなと思ったもの記載した図を説明し、医療・健康などカテゴリだけでなく、相談・悩みなど心のカテゴリ、生活・介護のお金や制度のカテゴリ(介護保険、確定申告、医療費還付など)に分けて、それらでデジタルを活用できれば大変楽になると述べた。技術では例えば、「痛み」をバーチャルなもので軽減する可能性などに言及された。
さらに、氏は、AIと医師による患者への説明で、回答の質や共感力などで医師よりもAIのほうが優れていると実験結果の論文を紹介した。チャットボットで下書きし、医師が編集できるようにするなど、デジタルでどこに力を入れて進めるべきで、どこを効率化していくのかというのを患者の目線を入れながら考えていきたいと述べた。
氏は、長期フォローアップという目線から、小児がん患者の30年の長期罹患率と死亡率のるデータを示し、患者はがんになった後も健康的に生きていきたいため、何に注意して生きて行かないといけないのかと言った情報共有などができていけるとありがたいし、結果的にコストの削減になるのではないか、と述べた。
最後に、桜井氏は、「システムはいろんなところで検討されているけど、自分のデータが散らばっていてなんで(自分の)手のひらにないのか、慢性疾患の患者なども含めてみんなで強く思った。創薬を考えた時に元々あったデータの話は2文書6情報だけじゃ絶対無理。それ国際共同支援と言って、海外とも連携しながら二次利用を促進して行かないと私たちの病気は治らない。(医療データ活用の)枠組みを作りながら、患者さんにメリット・デメリット伝えていって、共に歩んでいけるようなものをこれから一緒に考えて行けたらありがたいと思う」と締め括った。
宮内 恒 氏
講演資料「個人起点での健康・医療データ利活用とゆたかな生活の実現」
宮内恒氏ははじめに「データ駆動型で一人一人が幸せになる社会を目指しているところだが、そのベースになるのが、自分のデータを自分でコントロールする権利。データポータビリティがベースとなって、データ駆動型の社会が実現する。ただ、行使する具体的な手段がないと、実現は難しい。行使する具体的な手段が情報銀行だと考えています」と述べた。「パーソナルデータは重要だが、これを安全に扱って安心して預けていただくことは、これからの金融機関の新しい社会的な使命である。なぜ銀行が取り組むのかというと、自分の大切なものを託すという意味では、お金もデータも同じである」と述べた。
次に宮内氏は、医療データの情報銀行のイメージは、さまざまな医療機関に分散している自分の健康医療データを集め、自己管理を可能にして、本人の意思に基づいて、他の医療機関、家族、研究期間、サービスに提供するサービスということで、個人が起点であることが大事であるという。医療データ情報銀行サービス”decile”(デシル)の目的は、データの力で一人一人の人生をより豊かなものにすること。自身の理解は豊かな生活を送るための第一歩で、“データを知る”ことではなく“データで知る”ことが大事であると述べた。
”decile”の仕組みとして、まず情報銀行のアカウントを作って、そこに受診したら診療結果が流れてくる。患者さんはスマホでそれを確認でき、さらには本人の意思に基づいて別の先生や家族と共有できること、さらには第三者提供などもできる、と言う流れを説明した。
宮内氏は、「医療データという秘匿性の高い情報を扱うので、考え方、サービスを提供する上での考え方がものすごく重要になる。いろんな軸があるが、医療倫理の4原則、自律尊重、与益、無加害、公平正義に基づいて整理した」と述べた。本人の意思を尊重するためにきちんと本人であるということを確認するため「銀行口座と同様の本人確認」をしている。
氏は、「医療データを持つメリットとして、ポータビリティが増し、超長期の情報の管理ができ、患者さんからの情報提供など双方向のやり取りができるのではないかと考えている」と述べた。また、データ特性に則した取り扱い方針ということで、「レベル1:患者さん本人が閲覧でき、本人の意志に基づき、利用できるデータ。患者さんの分かり易さを考慮する」、「レベル2:患者さん本人が閲覧できるが、主に医療機関向けのデータであり、患者さんの分かり易さを考慮しない」、「レベル3:患者さん本人が閲覧でき、利用できるが、機微性が高く慎重な判断を要するもの」、「レベル4:患者さん本人が閲覧できず、本人の医師により医師が閲覧できる」、「レベル5:患者さんに渡すのではなく医療機関にとどめておくべきもの」など、5つのレベルに分類してそれぞれどのように扱うかを整理している。また「診療科共通のデータ」については全診療科の患者さんに、「 診療科毎のデータ」は診療課題毎に必要なデータを定義の上、該当の患者さんに返しているという。
宮内氏はそうした考え方を踏まえ作成したスマホアプリ”decile”の紹介をおこなった。「やりたいことを迷わない」をコンセプトに、診療課題ごとの情報や通院記録などを時系列に並べられいる様子や遠隔モニタリングなどの画像を示した。つぎに自身のデータを家族や別な先生に見てもらうため、スマホ上に表示されたQRコードを提示して相手に読み込んでもらい相手に自分の情報を提示するの「データ共有機能」の紹介を行った。
次に、これらのサービスを使用した患者さん(大阪大学医学部病院の患者さん、400組超、内産科の患者が約4割)の声を紹介した。医療データの情報銀行に対する意見としては、7割くらいのかたから非常に賛成ということをいただいた。さらに、パーソナルデータ利活用にかかる個人の不安とその払拭へ向けた努力ということで、患者さんの気になる点は大体3つに分かれたという。「勝手に使われないか。ハッキングされて漏洩しないか、なぜSMBCなのか」。こうした疑問に対して丁寧にご説明することで、7割くらいの方には納得していただけたという。
宮内氏は、最後に、「我々がするべきなのは分かりやすく説明する努力を継続して理解していただくこと、なるべくたくさんの方に使っていただくことかなと思う」とまとめた。
加藤 和人 氏
講演資料「希少疾患患者と研究者の協働による医学研究:RUDY JAPAN の実践と経験」
加藤和人氏は、はじめに「本日は、データを意識してというよりは、研究を患者さんと一緒にするという話をさせていただく。(このセッションのテーマと)どう関連するというのはディスカッションでお伝えできればと思う」と述べた。
加藤氏は始めに、「医学研究のプロセスに患者が関与すること(患者参画:Patient Involvement)で、ニーズに合致したより価値の高い研究を行うことができると期待されている」と述べた。例えば、 疾患により生じる多様な症状のうち、患者が最も改善してほしいと考える症状を軽減する治療や薬剤の開発ができるのではないかと考えられていること、こうした動きは、欧米を中心に1990 年代ごろから急速に広がってきたこと、最近では患者・市民参画(PPI, Patient andPublic Involvement)で、市民の参画も含めることが多くなっている、と述べた。
次に、日本における患者・市民参画の風景ということで2008年から現在に至る動きを説明した。氏は、日本では2017年から国主導の動きが始まったが、それに先行する形で2014年にRUDY JAPANの構想を開始したという。
加藤氏はさらに、参加(Participation)、エンゲージメント(Engagement)、参画(Involvement)の3段からなる三角形をしめし、患者・市民参画(PPI)は、その最上段で、「患者市民が研究者とパートナーシップを結び、研究の計画、デザイン、解析、評価、普及に関わること」だという。そうした流れのなかで、2014年にオックスフォード大学でRUDYが開始され、日英の共同研究としてRUDY JAPANを開始したという。
氏によれば、RUDY JAPANは、難病・稀少疾患 の患者の QOLや日常生活に関する情報を収集し、研究を進めるためのオンライン の 研究プラットフォームであり、OXFORD大のシステムを日本の状況に合わせて調整翻訳したシステムを開発したという。現在の対象疾患は、骨格筋チャネル行、遺伝性血管性浮腫、表皮水疱症の3疾患であり、RUDY JAPANは、①希少疾患患者がインターネットを介して登録し、QOL などの健康に関する情報(Patient reported outcome, PRO)を継続的に入力、データを蓄積していくレジストリと側面と、②患者と研究者の協働(患者参画)による医学研究の実施が可能かどうかを実践を通して明らかにするプロジェクト、という二つの側面を持つという。
氏は、講演のなかで②の側面について説明を行なった。具体的には、①患者と研究者がプロジェクト全体の方向性や運営について定期的に話し合うためのオンラインミーティングの実施、②患者と研究者が協働し, 探索的調査のための質問票(治療を受けなかった理由など)の開発や改良したり, 今後行う質問票調査の目標や計画に関する検討を実施したこと、③ダイナミックコンセントの実装、④HPやSNSなどをつかった情報発信などであるという。
氏は、RUDY JAPANがもたらしたものとして、「患者にとっても研究者にとっても、他では経験できない「学びの場」 となっていること」、「患者と研究者が協働する「エコシステム=場」ができたこと」など大きなメリットがあったと述べた一方で、研究活動のために患者と研究者の双方が時間や労力を割く必要があることや、研究に不慣れな患者にとっては, 研究者との対話が負担になりうる ことが明らかになったなど、課題も多数あると述べた。
最後に加藤氏は「一緒に研究を進めている方、特に患者さんの方に感謝して終わりたいと思います」との挨拶で締め括った。
討論
モデレータの松村氏は、はじめに「こういう活動をするに際して患者さんを巻き込もうというのはいいことだなと、むしろ意見を聞かずにやるべきではないと感じた次第です。今日桜井さんにきていただいたのもそういうところもありますし、真剣に考えてくれて、おっしゃることもそんなに無理があるわけでなく、経験を言って頂いています。研究者は研究者、よくないアナリズムはどこかに潜んでいるんですけれども、実際患者さんと話をするとそれは幻想であって、もっと一緒にやらないといけないなと感じた次第であります。自分の情報を扱うというところで我々医療の分野を担当させていただいているんですけど、当然データというのは病気にかかった方々のデータであって、Myは患者さん自身ですよね。その辺をしっかり捉えて、社会はどういうふうに実現していくのかというののインセンティブをお話しさせていただければと思います。」と述べた。
これに対し、桜井氏から:「共通点があるとすれば巻き込んでいっているところだったり、最初のハードルですよね。(情報を)取られるんじゃないのか、漏れるんじゃないのかというところを乗り越えるのがすごく難しいところであって、絶対に動かないところは私は絶対無理だと思っていて、社会はそうなってデフォルトになっていればその瞬間乗っていくのかなと思っているのですが、真ん中にいる人たちをどう押すのかというと、データを預ける、アカウント開設という言葉が、(そのハードルを)乗り越えやすい言葉だなと思いました。また加藤先生の話で、巻き込んでいく、その中で何が必要なのか、ということを研究者だけで作るのではなく、一緒に作っていくことでそこの最初の壁を乗り越えていくところが、データを得ることを考えたとき、みんなが感じる壁を乗り越えるひとつの方法だなと、ひとつアイデアをいただいたなと思いました。今銀河系のようにあるデータをまとめて、国の財産じゃないんですけど、どうやって繋いでいくのかをお聞きしたいと思いました。」と述べた。
宮内氏からは、「データをどうやって管理するというところですよね。我々銀行なので、個人情報の管理マネジメントというのは、世の中の事業者の中でも慣れているというか、組織文化として根付いていると思います。ご本人様の確認から始まり、その人のアカウント、その中身にデータをきちんと管理し、情報セキュリティ面もしっかりやっていきます。」と答えた上で、データ倫理・データマネジメントについても言及し、データの構造揃えて使える状態にすることの困難と重要性を提言した。
加藤氏からは:「一つはトップダウンで大きな仕組みを作ることをやっていかないといけない。上から大きな枠組みを一生懸命作っても皆さんはなかなか信頼しきらないと思うので、我々は小さいレベルで草の根的にやっていくと、少なくともだんだん広がっていくとあの大きな活動に意義があって信頼できるんだというのがクチコミレベルで広がっていくのではないかと思うんですよね。RUDY JAPANについて「我々が安心して活動できるのは、大阪大学の医療情報部がRUDY JAPANのデータを見てくれているというところが、すごく信頼が自分たちとしてもありますね」と言及した。
加藤氏はランニングコストの質問に対して、オックスフォードのシステムを無料で提供してもらい、日本語に書き換えた。それゆえ導入コストやメンテナンスコストも小さいと返答した。
宮内氏からは、患者さんに対して聞いてみたいこととして、「我々情報をお預かりしますと言うサービスをする上で、2つありまして、一つは預ける安心感というのを研究したい。もうひとつは預けることによって情報の価値を上げるということをやりたい。具体的にはビッグデータとしての価値ではなく、預けてよかったな、実感や共感を持ってもらえるよう提供したい。」と話した上で、「患者さんとして、先生が新創薬や自分と同じ境遇の方のためにデータを使いたいという患者さんいらっしゃいました。一方で、そこまで至らずにまだ治療に苦しんでいる方もいらっしゃって、そういう方にも情報によって自分が受ける攻撃が少なかった、あってよかったと、そういうポイントをお持ちであれば教えていただきたいです。」と桜井氏に質問した。
これに対し、桜井氏は「一言で言うとケアとかサービスに確実に繋がることだと思います。」と回答した上で、「ケアというのは副作用でしんどい時に放置されてしまったら困るわけですよね。しんどいよねの一言でもいいし、こうしたらということだったり、あるいは治療薬の増減があったりということもあるんですよね。そういう直接的な今の自分に対するメリットというのはケアとしっかり繋がると思っています。」と述べた。
宮内氏から「とすると、患者さんから情報を発信して、その情報をキャッチするというやり方を思ってらっしゃいます?」という質問に対し、桜井氏からは、「報っていうのはプル型とプッシュ型があると思うのですけど、昔はですね、プル型、手を挙げた人にだけ、相談に来た人にだけあげますだったんですけど、今後はプッシュ型になっていくと思うのですね。それを拒否できるかどうかは、患者さんに権利があると言ったと思うのですけど、拒否する利用するは患者さんが決められる。患者さんの悩み事聞くとお金の悩みがめちゃくちゃ多い。銀行がなんでやっているのというとき、お金の情報とか、そいうのも相談できたり適切につながっていけるといいなと思いました。」と述べた。
松村氏の加藤氏への質問で、「研究って何を研究して欲しいって聞いてそれをまとめていく活動ですが、おっしゃったところって入っていますか?」に対して、加藤氏からは、「どうやってベネフィットをもたらすかという話で、一緒にやっている人から学びあってもベネフィットだと思いますし、もっと大きく製品開発することを期待すると、ちょっとややこしいけど大事な議論をやっていくべきだと思います。」と答えた。
聴講者からは「今ヨーロッパの議論では、一次利用二次利用について、二次利用に患者さんはオプトアウトを認めるのかというのがひとつの疑問になっております。一部の患者さんの団体はオプトアウトを求めていると、一方で、日本の個人情報保護委員会に相当するような期間が、オプトアウト認めることによる弊害の方が大きいので認めない方向のほうがいいという意見も出ています。患者中心の考え方をしたときに、一次利用二次利用の時に患者さんがどのくらい関与するのが望ましいのか教えていただけないか」という質問が寄せられた。
これに対し、桜井氏からは「いろんな患者さんがいるので難しいと思いますが、常々啓発活動と一緒に進めていかないと広がらないと考えているのですよね。」との返答があり、松村氏からは「国の今の情勢的にしっかり把握したいというのに対して、治療薬の評価が欲しいだった時に基本的に患者さんが認めないという判断があって然るべきだと思うんですよね。同じデータ解析でも実は種類が違うと、それに応じて対応するべきじゃないかというのが私の意見です。」と回答した。また、桜井氏は加えて、早くベネフィットを列挙して会話を進めることの重要性を提言し、「ベースはコミュニケーションですよね。コミュニケーションが不足してると、誤解や懸念もあって、そこを払拭することをまず進めるべきだし、その点をしっかりやるべきなんだろうなと」と述べた。宮内氏、松村氏も同様に信頼関係の構築や説明におけるコミュニケーションの重要性について言及した。
最後に、パネルディスカッションのまとめとして登壇者から次のようなまとめがあった。
「データベースは過渡期にあるのかなと思っていますが、私たちは本当に期待をしています。これからの未来を作っていくところがたくさんあると思いますので、患者や介護者、家族の心も入れて、より良いwell-beingを目指していただければと思います。」(桜井氏)
「個人情報のデータ世界ってすごくパラダイムがシフトしている過渡期ですので、過渡期が終わった時に前より幸せな社会になったよねって言ってもらえるよう努力していきたいと思います。」(宮内氏)
「最近変わってきたなと思いました。これはうまくいくんじゃないか、そうすると日本の社会ですね、皆さんが皆さんを助けようとする文化、がうまく働くと、一気に行くんじゃないか、というのを思っておりまして、そこに人と人とのつながりが開くんじゃないかなと思っています。」(加藤氏)
「データですね、共有していきましょう、やはりそういう方向へ向かうのが正しいんじゃないかなと思いますね。そのために正しくいかに重要かを国民のコンセンサスとして得るということが、そう言っても守ることも技術者の方に考えてもらって、共有技術をうまく使いながら、より良い医療を実現していくということと、患者さんの方もそれを享受していただき、患者さん同士を助けるという形で、良い社会をつながっていけばと思いました。」(松村氏)
以上(文責・MyDataJapan2023 大会事務局)