案件名:電気通信事業法施行規則等の一部を改正する省令案等に対する意見募集の実施
提出先:総務省総合通信基盤局電気通信事業部事業政策課

提出日:2022年10月26日
提出者:一般社団法人MyDataJapan 公共政策委員会

提出意見

パブリックコメントの要旨

パブリックコメント募集対象である電気通信事業法施行規則等の一部を改正する省令案等のうち、いわゆる外部送信規律(電気通信事業法27条の12(情報送信指令通信に係る通知等))にかかる総務省令(第22条の2の27ないし第22条の2の31)について意見を述べる。

パブリックコメントの本文

1.第22条の2の27(利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務)

本条で指定した電気通信役務については異論はないが、法27条の12が義務を負う主体の範囲を過度に限定していることの問題については、改めて意見を述べておきたい。そもそも電気通信事業法の主たる目的の一つは、電気通信サービス利用者の保護にあることから、利用者保護の必要がある限度で義務を負う主体の範囲を画すべきであり、義務を負う主体を電気通信事業者等に限定する必要はない。また、外部送信を実施する主体のすべてが義務を負うとしたとしても、この義務は性質上、ウェブサイトやアプリに積極的に手を加えて外部送信を実施する主体のみが負う義務であるから、義務の範囲が過度に広範となるおそれもない。早期の法改正により義務を負う主体を拡大すべきである。

なお、技術的なことながら、「電気通信役務であって、ブラウザその他のソフトウェア(中略)により提供されるものとする」は、分かりにくいのではないか。むしろ「電気通信役務であって、ブラウザその他のソフトウェア(中略)によって利用されるものとする」の方が分かりやすいと思われる。

2.第22条の2の28(利用者に通知し、又は利用者が容易に知り得る状態に置く方法)

外部送信については、広く実施されているにも関わらず、一般の認識は極めて低く、総務省のプラットフォームサービスに関する研究会で報告された「プライバシーポリシー等のベストプラクティス及び通知同意取得方法に関するユーザー調査結果」によれば、外部送信の存在を知っている人も、外部送信によって自分の情報が外部事業者に渡されていると知っている人も、いずれも全体の3割しかおらず、日本人の約7割は、外部送信の事実を知らない。このような状況下においては、利用者に対する通知と利用者が容易に知り得る状態に置くことのいずれについても高度の分かりやすさ・視認性が求められる。

その観点から、第一に、本条1項の「通知」「容易に知り得る状態」の共通要求事項として、①日本語で記載、②専門用語を避け、平易な表現を用いる、③文字が適切な大きさで表示される、および④利用者が通知公表事項を容易に確認できるようにすること、の4つが求められているが、④の具体的な内容として、外部送信については、「サイトポリシー」「アプリプラポリ」等の独立した説明を実施すべきであり、電気通信事業者等のプライバシーポリシー一般の中に混入して表示することは不適切であることがガイドライン等で明らかにされるべきである。

第二に、通知公表事項の所在については、通知についてはポップアップ等又はそれと同等とされているものの(本条2項)、容易に知り得る状態については、「容易に到達できるウェブページ」「容易に到達できる画面」(本条3項)となっており、「容易に到達できる」範囲が判然としない。この点については、ガイドラインにより具体化・明確化が図られるべきであると共に、ウェブページやアプリの画面上のマークやインフォグラフィックスの標準化を推進し、利用者にとって「ここを見れば外部送信の通知公表事項がすぐに分かる」という状況を達成すべきである。

3.第22条の2の29(利用者に通知し、又は利用者が容易に知り得る状態に置くべき事項)

通知公表対象事項は、本条により、①送信される情報(1号)、②送信先(2号)、③送信される情報の利用目的(3号)となっている。これらに加えて、本条4号として「オプトアウトの可否」を追加すべきである。オプトアウトの可否は、自己に関する情報を外部送信される利用者にとっては重要な関心事であるところ、オプトアウトが可能な場合には、第22条の2の31に規定する「オプトアウト措置に関し利用者が容易に知り得る状態に置くべき事項」によって、オプトアウトに関する事項を知り得るが、オプトアウトが可能でない場合には、利用者がそのことを知る機会はないからである。

なお、本条3号の利用目的については、当初は送信先での利用目的に限られていたところ、これを送信先・送信元双方についての利用目的としていただいたことは適切であり、感謝の意を表する。

4.第22条の2の30(利用者が電気通信役務を利用する際に送信をすることが必要な情報)

本条1号から、「その他当該電気通信役務の提供のために真に必要な情報」を削除すべきである。本条は、利用者と送信元の双方にとって利便性のある外部送信を「必要な情報」として限定列挙することにより、通知公表が不要となる外部送信の範囲を限定し、外部送信に関する透明性の確保を図るものである。「真に必要」は、人により解釈が分かれ得るものであり、このような不明確な概念を採用して通知公表が不要となる範囲を広げることは本条の趣旨に反する。仮に今後、「これも利用者にとって明らかに利便性がある外部送信ではないか」という疑問が生じるものがでてきたとしても、さしあたり通知公表を実施したうえで、総務省令の改正を待てばいいのであり、送信元に大きな不利益が生じることはない。

5.第22条の2の31(オプトアウト措置に関し利用者が容易に知り得る状態に置くべき事項)

本条7号の利用目的については、当初は送信先での利用目的に限られていたところ、これを送信先・送信元双方についての利用目的としていただいたことは適切であり、感謝の意を表する。

総務省令に対する意見ではないが、そもそも法27条の12は、通知公表義務ではなく、オプトアウトの義務を規定すべきものであった。外部送信による情報の取得、蓄積、分析とそれに基づく働きかけが利用者の意思を離れて行われることは、現代社会における重大な問題であり、蓄積された情報の濫用がプライバシーに関する問題のみならず、リクナビやケンブリッジアナリティカ等の看過しがたい事件の原因となっていることに留意すべきである。そのような状況においては、利用者が自分の意思で外部送信に起因する取得・蓄積・分析の対象とならないようにする手段を確保することが重要であり、法改正によりオプトアウトの義務化が図られるべきである。

以上