(2022年8月25日)意見募集の結果が公表されました。
「プラットフォームサービスに関する研究会 第二次とりまとめ」及び 意見募集の結果の公表
案件名:プラットフォームサービスに関する研究会 第二次とりまとめ(案)についての意見募集
所管省庁・部局名等:総務省総合通信基盤局電気通信事業部消費者行政第二課
提出日:2022年8月3日
提案者:一般社団法人MyDataJapan 公共政策委員会
提出意見
本取りまとめ(案)全体の評価とパブリックコメントの要旨
SNS等のソーシャルメディアは、パンデミックの影響もあり、これまで以上に国民の日常生活に不可欠なものとなり、その在り方は、国民の表現の自由や知る権利、安心・安全な社会、さらにはわが国の安全保障といった多くの課題において、極めて重要な意味を持つようになっている。本取りまとめ(案)第1部は、SNS等のソーシャルメディアの在り方を決する誹謗中傷や偽情報への対応について、詳細なモニタリング等の調査を踏まえて、コンテンツモデレーションの透明性・アカウンタビリティの確保を重視した政策の方向性を打ち出しており、表現の自由に配慮しつつもプラットフォーム事業者による自主的な問題解決のインセンティブを与えるバランスの取れたものとなっている。他方で、第2部については、昨年9月の「中間とりまとめ」に記載された「通信関連プライバシー」の保護の必要性に基づく外部送信規制の提案の趣旨が、今般の電気通信事業法改正において十分に実現されたか、という点の検証を欠くものとなっているように思われる。
本取りまとめ(案)に対するMyDataJapanのパブリックコメントの要旨は以下のとおりである。
(1)データポータビリティについては、独立のモニタリング項目としたうえで具体的モニタリング項目を追加すべきこと、
(2)PIAについては、具体的モニタリング項目を追加すべきこと、
(3)電気通信事業法の改正によって導入された外部送信規律を継続的に見直すべきこと、
(4)コンテンツモデレーションのみならず、レコメンデーションについても透明性・アカウンタビモリティの確保を図るべきこと。
以下それぞれ述べる。
(1) データポータビリティについて
データポータビリティは、ユーザーが自分の情報を自分の手元に取り戻して、新たなサービス提供者を選ぶための重要な権利である。第2部第2章1において、「利用者情報の取扱いに関する主なモニタリング項目」が列挙されているが、データポータビリティは、「(2)利用規約・プライバシーポリシーについて」の小項目となっている。前記のようなデータポータビリティの重要性にかんがみれば、利用規約・プライバシーポリシーの小項目ではなく独立した大項目として位置付けられるべきである。
また、具体的なモニタリング事項として、「データポータビリティについてどのような取組を行っているか。(データポータビリティがある場合、利用のしやすさに課題はないか)」としたうえで、(1)データポータビリティの取組(方法・対象範囲等)、 (2)対象情報、方法、提供フォーマット、提供先、相互運用性等、(3)電磁的開示請求への対応、開示方法、提供フォーマット等、があげられているが、それ以外にも、開示までの期間、デジタルデータでの開示対応状況、料金算定方法などを具体的なモニタリング事項として追加すべきである。
さらに、必ずしもデータポータビリティの概念に含まれるものではないが、個人情報保護法における保有個人データの利用停止等請求(同法99条)の要件を満たさないユーザーデータの消去請求に対する対応状況についてモニタリング事項とすることが考えられる。
(2)PIAについて
PIAについては、その意義や機能について、様々な意見があるところであるが、実施方法の工夫によっては、プライバシー侵害のリスクやレピュテーションリスクを回避する有効なツールとなりうることから、その運用状況を可視化して情報共有を行うことは極めて有益であると考えられる。その観点から、第2部第2章2(7)において、具体的なモニタリング項目として、(1)PIA の導入状況、(2)利用者情報の取扱いに関するアウトカムに係る検討、(3)利用者に PIAの結果やアウトカムを説明しているか、が列挙されているが、これらに加えて、ステークホルダーミーティングを通じて、PIAの結果の承認を受けているか、当局の要求に応じてPIA報告書を提出できるようになっているか、などを具体的なモニタリング事項として追加すべきである。
(3)外部送信規律の見直し
電気通信事業法の改正により、外部送信規律が導入されたことは、電気通信サービス利用者保護の大きな一歩であった。しかしながら、対象事業者が電気通信事業者と三号事業者に限定されたこと、義務の内容が原則として外部送信の事実の通知・公表であること等、現行法の規律は限定的な内容にとどまるものである。
第2部第3章2「今後の対応の方向性」の冒頭には、外部送信規律の過去の検討結果について、以下のとおり記されている。「通信サービスの利用に関わる利用者端末情報とそれに紐づく情報の保護については、『通信関連プライバシー』として保護されるべき利用者の権利として、把握されるべきであると考えられる。即ち、情報通信が我が国の経済・社会活動、国民生活の基盤として重要な役割を果たすようになりつつあることを踏まえ、電気通信事業者や電気通信事業者の設備のみに着目するのではなく、電気通信サービスの利用者の権利に着目し、通信の秘密に加えて電気通信サービスの利用者のプライバシー保護を電気通信事業法の目的として考えていく必要があると考えられる。また、このような利用者端末情報等を取り扱う者の全てが、保護すべき義務を負うこととすることが考えられる。」(169頁)また、その後ろには、本検討会の中間とりまとめにおいて、「電気通信事業法等における規律の内容・範囲等について、e プライバシー規則案の議論も参考にしつつ、cookie や位置情報等を含む利用者情報の取扱いについて具体的な制度化に向けた検討を進めることが適当であると考えられる」と記載されたことも確認されている(170頁)。
今般の法改正による外部送信規律の「控えめな内容」が、上記の各記述の趣旨を十分に満たすものであるかどうかについては、疑問なしとしない。社会における電気通信サービスの利用状況の変化を踏まえて、電気通信サービス利用者の保護のために、通信の秘密に並ぶものとして通信関連プライバシーの保護を提唱した本検討会としては、改正電気通信事業法の法執行の状況を踏まえつつ、外部送信規律の対象事業者の範囲の拡大や、規律内容の実効化を検討すべきであり、第2部第3章「今後の取組の方向性」において、その旨を明記すべきである。
(4)レコメンデーションの透明性・アカウンタビリティの確保
本取りまとめ(案)は、第1部における違法・有害情報対策として、コンテンツモデレーション(削除やアカウント停止)の透明性・アカウンタビリティの確保をその中心においている。他方で、ユーザーに対するレコメンデーションに関しては、本取りまとめ(案)冒頭の「はじめに」において、「プロファイリングやその結果を踏まえたレコメンデーションが幅広く行われた結果、利用者にとって利便性が高まる一方、知らないうちにその結果に利用者が影響される可能性も高まっている」として、その問題性を指摘しつつも、明確な対応ないしその方針を示していない。SNS等のソーシャルメディアにおけるレコメンデーションのアルゴリズムがどのようなものであるかは、利用者がどのような情報に接するかを決し、それによって利用者の購買行動等に影響を与えるのみならず、投票行動や人格形成にまで影響を及ぼしかねない重要な問題である。したがって、第2部第3章「今後の取組の方向性」において、レコメンデーションの透明性・アカウンタビリティの確保のための施策を講じることを追加すべきである。第1部第1章3「海外動向」において紹介されたDigital Services Act(DSA)にも同趣旨の規定が含まれている。
以上